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【第88回】リフォームローンは名義が違う家でも申込める!ただし税制上の注意が必要

2023年06月26日
リフォームローンは名義が違う家でも申込める!ただし税制上の注意が必要
 自分が住んでいる親名義の家をリフォームしたり、親が住んでいる家のリフォーム費用をプレゼントしたりするなど、名義の違う家のリフォームを行いたいこともあるでしょう。しかし、こういった場合でもリフォームローンは利用できるのでしょうか。
 今回は自分の名義ではない家のリフォーム費用を調達する目的でもリフォームローンを申し込めるのかといった疑問にお答えするとともに、利用する際に注意すべき点について解説します。

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    1. リフォームローンは名義人が違っても組むことはできる

    リフォームローンの種類にもよりますが、基本的にリフォームローンの申込者と家の名義が異なっても、リフォームローンの利用は可能です。

    ただし、金融機関によっては「リフォーム対象の家の名義が申込者本人のものでなければならない」という条件がある場合もあるため、事前に申込条件を確認するようにしましょう。

    例えば、フラット35など低金利の住宅ローンの申込条件は、自分が住む家であることが前提であり、名義が自分のものであっても投資目的の物件は対象外です。別荘として使うセカンドハウスも融資の対象にはなりません。

    1-1 親名義の家をリフォームすることも可能

    リフォームローンは自分の名義の家以外をリフォームするときも利用できるため、もちろん親名義の家でも利用可能です。リフォームローンの利用条件は幅広く、取り扱う金融機関によっては、親名義の家だけでなく配偶者や兄弟名義の家でも利用可能とするところもあります。

    1-2 親族以外の名義だと難しい

    ただし、自分以外の名義とはいえ、誰の名義でも対象になるわけではありません。

    例えばですが、東京スター銀行のリフォームローンの条件は「自己(または家族)所有で、自ら居住している住宅」が対象ですし、千葉銀行のリフォームローンでは「本人居住用の住宅を保有(同居家族の保有を含む)していること」が条件です(2023年4月現在)。

    仮に親族以外の知人や友人名義の家をリフォームしたいとしても、リフォームローンは利用できない可能性が高いでしょう。

    2. 名義が違う家でリフォームローンを組むことの問題

    同居している家族や親などの名義でリフォームローンを組むことは可能です。ただし、その際に注意しなければならない点が2つあります。

    2-1 住宅ローン控除が受けられない

    住宅の新規取得だけではなく、増改築でも住宅ローン控除の対象となることがあります。増改築の対象となる工事には、マンションの区分所有部分や家屋の居住部分の修繕、模様替えの工事などが含まれます。

    ただし、増改築で住宅ローン控除を受けるための条件は以下のすべてを満たさなければなりません。

    • リフォームの日から6ヶ月以内かつ控除を受ける年の12月31日まで自分の住まいとして使用する
    • 住宅ローンの適用を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下
    • 増改築をした後の住宅の床面積が50平方メートル以上、かつ床面積の2分の1以上を自己の居住用にしている
    • 返済が10年以上にわたる
    • 複数の住宅を所有している場合は、居住用として認められる住宅であること
    • 一定期間、譲渡所得に関する課税の特例を受けていない
    • 自分が所有し、かつ自分が居住する住宅であること
    • 増改築の額が100万円を超え、その2分の1以上がが自分の住まいの工事費用であること

    このように、住宅ローン控除を受ける条件には「自分が所有し、かつ自分が居住する住宅であること」というものがあり、本人名義の住宅でないと住宅ローン控除を受けられません。

    2-2 贈与税が発生する可能性がある

    個人から贈与を受けると、金額に応じて贈与税が発生します。贈与税の負担者は贈与を受ける側になり、贈与を受けた側が申告して納税しなければなりません。申告には専門的な知識と手間、金銭的負担がかかりますので、贈与を行う側も納税負担がかからない範囲で行いたいものでしょう。しかし、名義が違う物件をリフォームすることで、「贈与が行われた」とみなされる可能性があります。

    なぜなら、本来自己名義の不動産の修繕などの管理は名義人本人が行うべきもので、費用負担も当然名義人本人が行うものです。しかし、名義人以外がリフォームローンを組み、返済している場合はローンの返済者から物件の名義人に対して贈与が行われているとみなされます。

    そのため、名義が違う家をリフォームするときには贈与税についても考慮しなければならないでしょう。

    2-2-1 年間で110万円を超えなければ課税対象にならない

    贈与税は、1年間(1月1日から12月31日)のうちの1年間に受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。つまり、年間110万円以下であれば贈与税は発生しません。

    110万円未満の小規模リフォームであるならば、贈与税については気にしなくてもよいでしょう。

    3. 名義を同じにするためにすること

    リフォーム対象となる物件の名義を、リフォームローンの申込者と同じする方法として、以下のものがあります。

    • 贈与
    • 譲渡(売買)
    • 共同名義

    これらの方法について、それぞれ詳しく解説します。

    3-1 贈与

    贈与により、家の名義をリフォームローンの申込者に変更すると名義人を同じにできます。ただし、この方法だと贈与になるため、物件の評価額によっては贈与税が発生するかもしれません。

    贈与となると、年間110万円以上の部分について贈与税が発生します。仮に住宅の評価額が2,000万円だった場合、2,000万円から110万円を引いた1,890万円に対して贈与税がかかります。

    ただし、直系尊属(親や祖父母)から直系卑属(子どもや孫)に対しての贈与税率は、特例税率が適用されるため、一般の贈与に比べ優遇されており、控除額が大きくなります。

    贈与税の税率は、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の二通りあります。具体的には、2,000万円(基礎控除額110万円を差し引くと1,890万円)に対する税率は一般税率だと50%(控除額250万円)ですが、特例税率だと45%(控除額265万円)です。そして、最終的な贈与税額は一般税率の場合695万円、特例税率の場合585万5,000円と100万円以上の差が生じます

    ちなみに、受贈者が配偶者の場合、贈与税の配偶者特例を受けられます。贈与税の配偶者特例とは、結婚期間が20年以上の夫婦の間で居住用不動産を贈与した場合、贈与税の基礎控除(110万円)に加え、最高2,000万円までの控除が受けられる制度です。

    3-2 売買

    リフォームする物件をリフォームローンの利用者に売却する方法もあります。リフォームローンを利用する方が物件を買い取ることにより、自己所有名義となります。

    ただし、売買価格が市場相場に応じた適正な価格でなければなりません。相場よりも著しく低い価格で売却すると、「親族間売買」とみなされ、みなし贈与の対象になるからです。

    不動産売買を行うにあたり、売主と買主との間で不動産売買契約書を締結する必要があり、その際には売買価格に応じた印紙税が必要です。さらに、所有権移転登記手続きが発生しますので、登録免許税もかかります。

    3-3 共同名義

    リフォームの費用を複数人で出資することにより、リフォーム対象物件の名義を共同名義にできます。単独名義から共同名義にすることを持分移転といい、出資した割合に応じた持分割合で登記を行います。

    登記を行う際には、持分割合に応じた登録免許税が必要なほか、図面の作成など専門的な知識が必要なため、多くの場合司法書士に依頼します。そのため、司法書士への報酬も考慮しておかなければなりません。

    共有名義にすることで、固定資産税の負担を分散できたり、今後売却する際の節税効果が期待できますが、共有名義の物件をリフォームしたり売却したりする際には、共有者全員の合意が必要となります。

    4. 住宅ローンが残っているのに名義変更は可能?

    住宅ローンの残債がある状態での名義変更はできますが、事前に金融機関の承諾を得なければなりません。金融機関によっては、名義変更を認めていないところもあるため、その場合は住宅ローンの借り換えを検討する必要があります。

    住宅ローンの借り換えとは、新しい金融機関で住宅ローンを組み、融資金額で借り換え前の住宅ローンの残債を完済する方法です。新しい金融機関で住宅ローンを組むということは、新たに審査を受けなければならず、申込者の収入や年齢などの属性や担保となる物件によっては審査に通らないか、通ったとしても希望価格の融資を受けられない可能性もあります。

    5. 名義が違うままで問題がないパターン

    以下のケースに当てはまるなら、名義が違うままでも問題ありません。

    • リフォームの規模が小規模で、リフォームにかかる費用が贈与税や住宅ローン控除の適用対象外である
    • 名義変更を行うほうがお金や手間がかかり、かえって出費が増える
    • 借り入れしたい金融機関が、名義が異なっても問題ないと回答している

    贈与税や住宅ローン控除のために名義変更を考える方もいるかもしれませんが、名義変更に多くの手間や費用がかかります。名義変更し住宅を贈与や売買するときにかかる費用のほうが多くなるのであれば、あえて名義変更はしなくてもよいでしょう。

    6. 名義を同じにしたほうがよいパターン

    大規模リフォームで費用が多くかかるときは、住宅ローン控除の恩恵が大きくなることがあります。贈与税が発生することもありますし、そういったときには名義を同じにしたほうがいいでしょう。

    また、どうしても使用したいリフォームローンが、ローン申込者とリフォームする物件の名義が同じでなければだめだという条件がある場合も、名義を同じにしなければなりません。リフォーム対象となる物件やローン契約者との関係で状況は変わるため、柔軟な対応が必要です。

    7. 住宅ローンは名義が違う家だと組めない

    リフォーム費用を調達するためのローンとして、リフォームローンではなく住宅ローンを使いたいと考える方もいるでしょう。しかし、住宅ローンは原則としてローン契約者が住むための家に対する購入費用やリフォーム費用を資金使途としているため、名義が違う家のリフォームに住宅ローンは使えません。

    そのため、リフォームに住宅ローンを利用したいなら、リフォームする住宅の名義を住宅ローン申込者と同じにしなければなりません。ただ、住宅ローンは夫婦や親子であれば、共同で利用できます。リフォーム費用を複数人で負担する場合、以下で紹介する方法を試してみましょう。

    7-1 夫婦ペアローン

    夫婦ペアローンとは、夫婦それぞれで住宅ローンを申込み、契約する仕組みです。共働きの夫婦であれば、それぞれの収入があるため、2人でそれぞれ住宅ローンを組めます。

    ただし、ローンの契約が2本になるため、住宅ローンの契約にかかる諸経費も2倍かかることなどには注意が必要です。

    また、住宅ローンの残債がある間に離婚した場合、どちらかの名義にまとめる必要があり、借り換えの手続きが発生します。その際、そのときの収入状況によっては審査に通らず、最悪の場合家を売却しなくてはなりません。

    7-2 親子リレーローン

    親子リレーローンとは、文字どおり親子2代で住宅ローンを返済していくものです。通常、親が申込者になり、子どもは親の後継者という立場です。そして、親子リレーローンを利用する際の後継者の要件には、一般的に以下のような点があります。

    • 申込者本人の子どももしくは孫であること
    • 申込時の年齢が満70歳未満であること
    • 連帯債務者になること

    注意しておきたいのは、子どもは親の連帯債務者になることから、ほかの住宅ローンが組めなくなる可能性があることです。

    親子リレーローンの利用は、親が高齢でも申込めることや、返済期間を長く取れるため毎月の返済額を抑えられるというメリットがありますが、注意点の内容をしっかりと把握したうえで利用を決めましょう。

    8. さまざまなリフォームローンの条件

    リフォームローンの詳細は、リフォームローンを提供する金融機関によって異なります。

    以下に代表的な金融機関のリフォームローンを比較してみましたので、参考にしてください。

    ※2023年4月現在

    金融機関 横浜銀行 三菱UFJ銀行 イオン銀行 住信SBIネット銀行 みずほ銀行 りそな銀行
    金利
    年2.7%
    (変動金利)
    年1.99%~2.875%
    (変動金利)
    年2.95%
    (固定金利)
    年2.475%~4.475%
    (変動金利)
    年3.975%
    (変動金利)
    年4.550%
    (固定金利・借入期間10以下)
    年5.200%
    (固定金利・借入期間10年超)
    年3.975%
    (変動金利)
    借入可能額
    10万円以上1,000万円以内
    50万円以上1,000万円以内
    30万円以上500万円以内
    10万円以上1,000万円以内
    10万円以上500万円以内
    10万円以上1,000万円以内
    借入期間
    1年以上15年以内
    6ヶ月以上15年以内
    1年以上10年以内
    1年以上10年以内
    6ヶ月以上15年以内
    1年以上15年以内
    名義人について
    本人または同居している家族(3親等以内)が所有もしくは部分所有している自宅
    本人または家族(配偶者・両親・義両親)が所有している住宅
    本人または同居する家族が所有する本人居住用住宅
    ・名義に関する記載なし
    ・事業用の不動産は利用不可
    本人または親族が所有する住宅
    本人もしくは実家などの住宅
    特徴
    ・住宅ローンおよび銀行振込利用者に優遇金利あり
    ・リフォームが決まる前でも申込み可能
    ・リフォームローンの借り換えも可能
    ・バリアフリー優遇あり
    ・担保や保証人は不要
    ・来店不要で申し込める
    ・来店不要で申し込める
    ・借入金額が100万円までなら年収証明不要
    ・固定金利と変動金利を選べる
    ・バリアフリー優遇あり
    ・住宅ローン利用者、太陽光発電設備など設置者に優遇金利あり
    ・ポイントが貯まる

    名義が違うときは税制上の注意が必要

    リフォームローンでは、本人名義の住宅のリフォームでなくても融資を受けられます。ただし、誰の名義でもいいというわけではなく、同居している家族などの親族に限定されており、他人名義の家のリフォームには利用できません。

    リフォームローンを含め、申込者と物件の名義が異なると住宅ローン控除や贈与税で問題が発生する可能性があります。

    そのようなときには、事前に同じ名義に変更することも検討しましょう。

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    ライター紹介

    氏名:
    新井智美
    保有資格:
    ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
    主なキャリア:
    コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,500本以上。

    リフォームローンに関するよくある質問

    ここからはリフォームローンについてよくある質問について、その回答と合わせて紹介します。

    リフォームローンの金利相場はどのくらい?
    リフォームローンの金利相場は無担保型と有担保型の種類によって金利差があります。無担保型は担保がない分審査基準も厳しく、金利が1%~5%台と高めに設定されているものが多く、借入金額も有担保型と比較すると少額となっています。有担保型の金利は1%~3%程度と低金利で借り入れすることができます。
    リフォームローンの審査基準とは?
    リフォームローンの審査基準は一般的に「年収に対して無理のない返済負担率」であるか、「完済時年齢」、「年収」「他社借入状況」などがあげられます。リフォームローンの審査に落ちる人の傾向として、返済負担率が超過していることや申込書類の不備、他社からの借り入れが多いなどがあるのでローン申込みの前に見直しておくとよいでしょう。
    リフォームローンの返済方法は?
    元金均等返済と元利均等返済があります。元金均等返済とは元金の返済額は毎月一定ですが、元金と利息の割合が変化するため、ローン残高が始めのうちは多いですが終盤になると少なくなるのが特徴です。元利均等返済は返済額が一定となるため、返済プランを立てやすいものの、元金均等返済と比較すると返済総額が大きくなることがあります。
    リフォームローンのお金を借りるまでの流れは?
    リフォームローンでお金を借りるまでの流れは、①リフォーム業者へ必要費用の確認、②金融機関へローンの申込み、③仮審査、④必要な書類を金融機関に提出し本審査、⑤融資実行となります。担保の有無で提出書類や借入可能額の上限も変わってくるので申込み前に情報収集しておくとよいでしょう。
    リフォームローンを利用するには保証人が必要?
    リフォームローンは原則保証人が不要なローンです。なぜならローン契約時に申込資格として保証会社の保証を受けられる人が対象となることが多いからです。保証会社は契約者が返済不能となったときに弁済する役割があるため金融機関としてはリスクを減らすことができます。
    リフォームローンの借り入れまでの日数はどのくらい?
    借り入れまでの日数は平均1週間~2週間程度とされています。金融機関の種類や、担保の有無でも融資までの時間は変わってきます。ノンバンクのリフォームローンで無担保型の場合、借り入れまで3日程度なのでスピード優先の方にはよく、銀行系では2週間程度かかりますが、金利が低いため返済総額を抑えたい方には向いているとされています。

    ライター紹介

    新井 智美
    氏名
    新井 智美(あらい ともみ)
    保有資格
    ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
    主なキャリア
    コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,500本以上。
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