【第108回】マイカーローン（自動車ローン）を“残債上乗せ”でまとめたい！利用可能な金融機関や注意点とは

1 マイカーローン（自動車ローン）の残債上乗せとは

マイカーローン（自動車ローン）の残債上乗せとは、現在返済中のローンの残債を新しいマイカーローン（自動車ローン）に上乗せするものです。新しいマイカーローン（自動車ローン）の融資実行後、上乗せした残債は繰り上げ返済を行います。
 ただし、新しくマイカーローン（自動車ローン）を組むときに、車の購入料金に残債が追加されるため、当然借入希望金額は大きくなってしまいます。そのため、毎月の返済額が高額になること、審査通過が難しくなる可能性が高くなる点には注意が必要です。

残債上乗せとなる原因として、オーバーローンと残クレが挙げられます。

1-1 オーバーローン

オーバーローンとは、車を売却した際の価格がローンの残債を下回ることです。その場合、車の売却額でマイカーローン（自動車ローン）を完済することができません。

この差額分を新たに契約するマイカーローン（自動車ローン）の借入金額に加えることを残債上乗せといいます。

ちなみに、残債上乗せの場合、車を売らずにその時点のマイカーローン（自動車ローン）借入残高を上乗せして借り入れることも可能です。その場合でもマイカーローン（自動車ローン）は一本にまとめられます。

1-2 残クレ

残クレとは残価設定クレジットの略称で、少ない負担で新車を購入できるシステムです。

通常のマイカーローン（自動車ローン）では車両価格全部を借り入れ、返済していきます。しかし残クレでは、3年や5年といった期間を事前に決め、そのときの価値を残価として車両価格から差し引いた金額のみを返済する仕組みです。

車両価格全体ではなく契約期間後に想定される価格を差し引いた金額だけ支払えばよいため、毎月の返済額を抑えられます。

残クレでは、事前に決めた期間が経過したときに、その車を売却して乗り換えるのか、残価を支払いながらその車に乗り続けるか、選択可能です。

2 残債上乗せで車を購入するメリット

マイカーローン（自動車ローン）の残債上乗せで新しく車を購入するにあたって、得られるメリットは以下のとおりです。

• マイカーローン（自動車ローン）を完済していなくても新しい車を購入できる
• 適用される金利が低くなる可能性がある

これらのメリットの詳細について、以下で詳しく説明します。

2-1 完済を待たずに新車を購入できる

残債上乗せであれば、自分の好きなタイミングで車を購入できます。

マイカーローン（自動車ローン）返済中に新しい車を欲しくなることもあるでしょう。例えば、今購入しなければ次の納期は1年後になってしまう、珍しい限定モデルが販売された、といったケースでは完済を待たずに購入しないと手に入りにくい状態になってしまいます。

そのようなときにマイカーローン（自動車ローン）の完済を待たずに、欲しい新車を購入可能です。

特に最近では車の価格が高騰傾向にあり、購入を先延ばしにすることで車両価格が上がってしまうという不安も否定できません。値上がり前に車を購入することで最終的な購入金額を減らせる可能性があるなら、完済を待たずに購入できるのは大きなメリットといえるでしょう。

（参考）経済産業省 (meti.go.jp)「乗用車の価格上昇の要因を探る｜その他の研究・分析レポート」

2-2 金利が低くなる可能性がある

今契約しているマイカーローン（自動車ローン）よりも金利の低いマイカーローン（自動車ローン）で残債上乗せをすれば、金利分の負担が軽くなります。残債分においては、そのまま借り続けるよりも最終的な利息負担が抑えられるでしょう。

ただし、これは確実ではありません。現在提供されているマイカーローン（自動車ローン）は変動金利が主体であり、今後金利が上昇する可能性があるからです。

仮に今よりも金利の低いマイカーローン（自動車ローン）で残債上乗せを利用したとしても、繰り上げ返済を活用するなど利息負担を軽減する工夫を忘れないようにしましょう。

3 残債上乗せで車を乗り換えるときの注意点

一見メリットが多く見える残債上乗せですが、残債上乗せで新しくマイカーローン（自動車ローン）を組む場合、確実に借入金額が大きくなる点には注意が必要です。毎月の返済額が増え、家計の負担が重くなるかもしれません。
 また、新しく申込んだマイカーローン（自動車ローン）の金利が前よりも低ければいいのですが、逆に金利が高くなる可能性もあります。
 残債上乗せで車を乗り換える際には、この点に注意したうえで利用するマイカーローン（自動車ローン）を選ぶようにしましょう。

4 マイカーローン（自動車ローン）を残債上乗せで利用するときの流れ

ここでは、これからマイカーローン（自動車ローン）を残債上乗せで利用しようと考えている方に向け、利用にあたっての流れを説明します。スムーズに新しいマイカーローン（自動車ローン）の契約に進めるためにも、流れをしっかりと理解しておきましょう。

4-1 残債がある車を乗り換えるかどうか決める・見積もりに出す

マイカーローン（自動車ローン）が残っている中で購入したい車がある場合、必ずしも今乗っている車を売却しなければならないわけではありません。売却したほうが残債を減らせますが、今の車に乗りつつ新しい車を購入する、つまり車を2台保有するという選択肢もあります。

そのため、まず残債がある車を乗り換える（売却する）かどうかを決めましょう。乗り換えるのであれば、車の売却価格がいくらになるのか見積もりをとり、最終的に売却価格で完済できるのかどうか確認します。

4-2 残債上乗せができるマイカーローン（自動車ローン）を探す

車を売却して残債がでなかったときは、通常どおり自分に合ったマイカーローン（自動車ローン）に申込みをしましょう。

しかし、売却価格が借入残高よりも低いことが分かったら、残債上乗せの利用に対応しているマイカーローン（自動車ローン）を探さなければなりません。なぜなら、全ての金融機関で残債上乗せができるわけではないからです。

残債上乗せへの対応についてはそれぞれの金融機関の公式サイトに掲載されているケースが多いですが、よく分からない場合は店舗や電話で問い合わせてみてください。

4-3 新しい車のためのマイカーローン（自動車ローン）を組む

利用するマイカーローン（自動車ローン）が決まったら、申込んで審査を受けます。審査に通過したら残債上乗せのマイカーローン（自動車ローン）が利用できます。

ただし、審査は確実に通過できるわけではありません。車を乗り換える（売却する）予定の方は、新しいマイカーローン（自動車ローン）の審査に通過したことを確認した後で売却手続きに入ることをおすすめします。審査通過できなかったときに、車が手元にない状態になってしまいます。

5 残債上乗せができるマイカーローン（自動車ローン）

ここでは、公式サイト上で残債上乗せが可能と明記しているマイカーローン（自動車ローン）を4つ紹介します。残債上乗せのマイカーローン（自動車ローン）を選ぶ際の参考にしてください。

※2024年10月2日時点の情報です

5-1 オリコ「ツインリセットオートローン」

オリコには、残債上乗せ専用のマイカーローン（自動車ローン）があり、新しく購入する車の代金と、売却する車のローン借入残高を1つのローンにまとめられます。

このローンは、まず売却する車のローン残債から下取り価格を差し引き、その差額と新規購入者の車両代金をまとめる仕組みです。購入する車は新車に限らず、中古車でも利用できます。

5-2 大分銀行「マイカーローン」

大分銀行「マイカーローン」は、他社のマイカーローンの借り換えや一本化にも利用可能です。ただし、ネット契約タイプでは利用できないため、必ず店頭に出向く必要があります。

店頭契約タイプでは、大分銀行アプリをダウンロードしたのちに口座情報を登録するか、給与振込や住宅ローンを利用している場合に、年0.6%の優遇金利を受けられます。

また、適用金利に年0.3%上乗せすることで団体信用生命保険を付加できる点も大きな特徴です。がんと診断されたり、死亡もしくは所定の高度障害の状態に該当したりしたときには、ローン残債が保険金で支払われます。

最近は車の価格も上昇していることから、借入金額も大きくなることが予想されます。残債上乗せならなおさらでしょう。自分にもしものことがあった際に、その後の返済に不安があるなら団体信用生命保険に加入しておくことをおすすめします。

ただ、繰り上げ返済を利用する際には5,500円が必要になることや、大分県外から大分県内に移住した方については申込条件が異なる点には注意が必要です。

5-3 宮崎太陽銀行「マイカーローン」

宮崎太陽銀行の「マイカーローン」では、借換専用マイカーローンを取り扱っており、現在借り入れ中の車の返済と合わせて新車購入代金もまとめられます。

また、マイカーローン（自動車ローン）にしては珍しく、固定金利と変動金利が用意されている点も特徴的です。これからの金利上昇が気になる方は、固定金利を選ぶことでリスクを回避できます。

パートやアルバイトのほか、年金受給者の方でも申し込めるなど申込条件の基準も緩やかに設定されている点も魅力です。

5-4 鹿児島銀行「かぎんマイカーローン」

鹿児島銀行の「かぎんマイカーローン」は、現在借り入れ中のマイカーローン（自動車ローン）と新たに借り入れるマイカーローン（自動車ローン）を一本化できます。原則保証会社からの保証を受けられることを条件にする金融機関が多い中、かぎんマイカーローンでは「保証会社なし」を選択可能です。

適用される金利は、借入期間によって異なり、借入期間が10年以内の場合は固定金利、10年長15年以内の場合は全期間変動金利が適用されます。

かぎんマイカーローンでは、団体信用生命保険も付加できるため、借入金額が高額になる方にもおすすめです。ただ、その際には適用金利に年0.2%の上乗せが発生する点に注意してください。

ちなみに保険が適用されるのは、死亡もしくは所定の高度障害の状態になった場合、そして医師の診断書などで余命6ヶ月以内と判断されたときです。

6 ローンが残っていても上乗せして借りることも可能！

新しい車の購入を考えた際、今乗っている車のローン残債が残っていても、それを上乗せして新しいマイカーローン（自動車ローン）に申込むことができます。そうすることにより、残債があっても新しい車を購入できますし、金利が低いマイカーローン（自動車ローン）を利用できれば金利負担を軽くすることも可能です。

ただ、新しいマイカーローン（自動車ローン）の適用金利や、借入金額および借入期間によっては、その後毎月の返済額が多くなる可能性がある点に注意が必要です。

また、残価上乗せのマイカーローン（自動車ローン）はどの金融機関でも取り扱っているわけではありませんので、利用する際には事前に残債上乗せで借りられるかを確認したうえで申込みましょう。

7 Q & A

Q1.残債があってもマイカーローン（自動車ローン）は組める？

今の車のローン残債があっても、新しい車の購入時に借入残高を上乗せして組めるマイカーローン（自動車ローン）はあります。ただし、借入金額や適用金利、借入期間によってはその後の返済が負担になる可能性があるため、事前に必ずシミュレーションしてみてください。

Q2. 残債上乗せはどこの金融機関でも可能？

残債上乗せはどの金融機関でも取り扱っているわけではありません。借り換え可能となっていても、それは今のローンだけを借り換えができるということで、新しいマイカーローン（自動車ローン）に残債を上乗せする借り換えは不可としている金融機関もあります。

Q3. 残債上乗せと残クレとの違いは？

残債上乗せとは、新しく購入する車の購入費用に今の車のローン残債を加えて新しくマイカーローン（自動車ローン）に申込むことです。それに対して残クレ（残価設定クレジット）とは、一定の期間を決め、その時の価値を残価として車両の価格から差し引き、その金額を返済する仕組みです。

Q4. すでにある車を手元に残して残債上乗せできる？

金融機関によります。車の売却を前提に、売却額との差額のみを対象としている場合もあるため、資金使途の条件を確認しましょう。ただ、売却しない場合は車を2台保有することになるため、税金などの維持費が2台分かかるほか、ローン借入残高によっては借入金額が高額になり、毎月の負担は重くなります。

Q5. マイカーローン（自動車ローン）には審査がある？

マイカーローン（自動車ローン）もローンの1つですので、審査に通らなければ利用できません。審査では申込者の属性や信用情報をチェックされます。特に、信用情報を照会した際に信用事故情報が登録されていた場合、審査に通ることは難しくなるでしょう。