【第84回】教育ローンの返済は大変?奨学金と比較しながら解説

本記事ではこれから教育ローンや奨学金を利用しようと考えている方に向けて、教育ローンと奨学金の違いや返済の大変さについて解説します。合わせて記事の後半では返済が負担にならないようにするためのコツも紹介しますのでぜひ役立ててください。
1. そもそも教育ローン(国・民間)とは

教育ローンには、国の教育ローンと民間の教育ローンがあります。
国の教育ローンとは、日本政策金融公庫が行っているもので正式には「教育一般貸付」といわれます。そして、民間の教育ローンとは各金融機関が提供している教育ローンを指します。
これらの教育ローンは学生が申込んで返済する奨学金とは異なり、親などの保護者が申込みして返済する点が特徴です。
2. 奨学金制度は学生本人が契約・返済する
奨学金制度は日本学生支援機構が行っているもので、憲法および教育基本法で定められている「教育の機会均等」という理念に基づき、経済的な理由で高等教育の修学が困難な優れた学生に向けて修学にかかる費用の貸与もしくは給付を行っています。
奨学金は教育ローンとは異なり、学生本人が申込みをして社会人になってから返済を行う仕組みです。
3. 教育ローンと奨学金の返済はどちらが大変?違いを徹底比較

では、教育ローンと奨学金の返済はどちらが大変なのでしょうか。項目ごとに違いを比較してみましょう。
3-1 運営元
教育ローンと奨学金は運営元が異なります。
教育ローンは民間の金融機関が運営元となり融資を行っています。また、教育ローンには国が提供しているものもあり、それは日本政策金融公庫の教育一般貸付になります。なお、国の教育ローンと民間の教育ローンは併用可能です。
一方、奨学金は日本学生支援機構が提供しており、学生の間に借りたお金を社会人になってから返す方法で、返還金は後輩の奨学金として活用される仕組みになっています。
3-2 借入金利
教育ローンの金利は運営元によって異なります。
国の教育ローンであれば、1.95%の固定金利(2023年2月時点)ですが、民間の銀行や信販会社だと2%~10%など利用する金融機関によって異なります。また変動金利であることが多く、返済中に毎月の返済額が変わることや、今後の金利上昇リスクも考慮しなければいけません。
また、国の教育ローンには金利や保証料の優遇制度が設けられており、ひとり親世帯や交通遺児家庭および世帯年収の条件を満たすことで金利が1.55%になるほか、保証料が通常の半額になります。
国の教育ローンと民間の教育ローンでは金利に大きな差がありますので、利用する際にはしっかりと比較し検討を行うことが大切です。
奨学金の場合、給付型は返還の義務もなく金利も発生しません。一方貸与型の第一種奨学金は無利子ですが第二種奨学金は有利子ですので、返済時には金利と合わせて返済していかなければなりません。適用される金利は貸与が終了したときに決まり、参考までに2022年3月に貸与が終了した場合の利率は年0.369%と極めて低く設定されています。
金利の低さで考えれば奨学金の利用がおすすめです。金利が低いことで返済総額を抑えることにつながります。
3-3 受取
教育ローンはいつでも申込みができ、審査に通過して契約手続きが完了すれば融資が受けられます。
奨学金の給付および貸与は採用方法によって異なります。奨学金の採用方法には進学前に申込む予約採用と大学に進学してから申込む在学採用があり、予約採用の場合は大学に進学してから給付もしくは貸与が開始される仕組みです。
在学採用の場合はさらに春と秋の定期採用のほか、緊急採用や応急採用の2種類があり募集期間が異なります。そして採用の種類によって給付および貸与の開始時期に違いがあります。
進学前に申込む予約採用の場合、給付および貸与が始まるのは大学に入ってからですので、それまでに必要となる受験費用や入学金、前期の授業料は自己資金で準備しなければならない点に注意が必要です。もし自己資金で準備できないなら教育ローンを利用することになります。
奨学金は申込んでも必ず採用されるとはかぎりません。また、進学前に申込んで採用されたとしても、入学金などの費用は自分で準備しなければなりません。そのため、教育ローンを早めに申込んでおくことも考えましょう。その際には受験費用や入学金、前期の授業料がいくら必要なのか、自宅外から通うとなると部屋を借りる費用や引っ越し費用も考えておかなければなりません。
いざというときに資金がなくて払えないという事態にならないよう、事前に準備しておくことが大切です。
3-4 返済
教育ローンの場合、申込みをするのは保護者であり返済も保護者が行います。返済は原則として融資を受けた次の月から始まります。中には在学中の返済は利息だけという教育ローンもありますので、子供の進学が重なるなどで返済が負担になる場合は、在学中は利息だけ返済すればいい教育ローンを選ぶと毎月の返済負担を削減することが可能です。
奨学金は学生本人が借りて学生本人が返していくものです。具体的には貸与が終わった翌月から数えて7ヶ月目から返済が始まります。社会人になってから返済開始というイメージが強いため、卒業後、就職してから返済が開始すると思われている方も多いと思いますが、誤解のないようにしておきましょう。
また、返済方法については第一種奨学金では所得連動方式を選べますが、第二種奨学金は定額返還方式のみとなっています。所得連動方式とは、所得に応じて毎月の返還額が決まる方式で、年収に応じて次の1年間に返還するときの月額が決定する仕組みです。定額返還方式は借りた金額に応じて自動的に返還する月額が決まる仕組みで、毎月の返済額は変わりません。
返済においては家計の状況や学生の就職状況、そして収入状況によってその大変さが変わってくるといえるでしょう。
3-5 受付時期
教育ローンの受付時期は特に決まっていません。いつでも申込みができます。しかし、教育ローンも審査がありますので、「いつ」「どのくらいの資金」が必要なのかを把握しておき、余裕を持って申込むようにしてください。
奨学金は受付時期が設けられており、予約採用の場合は基本的に春に行われます。またそれ以外にも緊急採用や応急採用が行われています。在学採用も同様です。さらに、家計急変世帯に対しても家計急変採用枠が設けられており、家計が急変した事由が発生してから3ヶ月以内に申込まなければいけません。
緊急採用や応急採用は年間を通じて受け付けていますが、申込み時期によっては予算の都合上翌年度の採用になる可能性があります。
奨学金は基本的に受付期間が決まっており、その期間中に申込みを終える必要があります。また、申込みに必要となる書類も多く、事前の準備が欠かせません。学校によってはガイダンスの場を用意したり、個別相談の時間を設けたりしていますので積極的に利用し、不明点などについて確認しておきましょう。
さらに奨学金には学力基準が設けられており、一定以上の学力を満たしているか、満たしていない場合は進学しようとする学修意欲があるかをレポートの提出などで示す必要があります。
4. 教育ローンなどの支払いを滞納するとどうなるのか

教育ローンや奨学金の返済を滞納すると、まず催告が行われます。催促が行われるまでには既に延滞金が発生していますので、返済する際には延滞金も合わせて返済しなければなりません。
催促が行われても返済を行わなかった場合、滞納の情報が信用情報機関に登録されることになり、ローンやクレジットカードの申込みができなくなります。場合によっては訴訟に発展し、財産を差し押さえられる可能性もあります。
返済が難しいと感じても滞納を起こさないよう事前に対応するようにしましょう。また滞納を放置しないことも大切です。
5. 返済中にお金を滞納しそうになったときの対処方法とは
では、返済中に滞納しそうになったときにはどのように対応すればいいのでしょうか。ここでは考えられる対処法を紹介します。
5-1 【教育ローン】金融機関に相談する
教育ローンの返済が難しくなった場合は、借入先の金融機関に直接交渉してみましょう。支払えない理由やいつまでなら支払えるかなどの内容を真摯に伝えることで、場合によっては返済日を変更してくれるなど柔軟に対応してくれる可能性があります。
ただ、返済日その日に相談するのではなく、返済が難しいことが判明した時点で早めに相談するようにしてください。
5-2 【奨学金】救済制度を利用する
奨学金の返済が難しくなった場合は、救済制度が用意されています。救済制度には、毎月の返済額を少なくする「減額返還制度」と返還期間の猶予を申し出る「返還期限猶予」の2つがあり、どちらも申込んで手続きを行う必要があります。
また、申込んでも承認されない場合もあり、その場合は今までどおり返済を行わなければなりません。
5-3 【奨学金】貸与型第一種は所得連動返還方式に変更する
貸与型である第一種奨学金の返済については、所得連動返還方式を利用できます。もう1つの定額返還方式での返済が難しくなった場合は所得連動返還方式に変更することを考えましょう。
所得連動返還方式に切り替えることで毎月の返済額が少なくなるというメリットがありますが、返済総額は変わらないため返済期間がその分長くなる点がデメリットです。
5-4 債務整理も一つの解決策
上で紹介した対処法を利用しても返済が難しい場合は、債務整理を考えることも1つの解決策です。債務整理とは話し合いのうえで現在の借金額を減少させたり、免除したりする方法で裁判所が介入するケースもあります。
債務整理には任意整理や個人再生、自己破産があります。
5-4-1 任意整理とは
任意整理とは裁判所を通さずに、お金を借りている側と貸している側とで直接話し合い、将来の利息やこれまでの遅延損害金をなしにするほか、3年~5年以内で今後の返済期間を決めて返済計画を立て直す方法です。
任意整理は裁判所を通さずに行えることや、いったん借金の返済をストップできるというメリットがあります。
5-4-2 個人再生とは
個人再生は、裁判所を通した手続きになります。借金を最大90%減らせる可能性がある点が特徴ですが、残りの借金は原則として3年程度で返済する必要があり、その後もある程度の収入があることが条件です。
個人再生の場合、自己破産とは異なり財産を差し押さえられる心配がない点がメリットです。ただし裁判所を通すため、個人再生を行ったことが公になってしまう点はデメリットとなります。
5-4-3 自己破産とは
自分が保有している一定額以上の財産を換金するなどして返済し、それでも残っている借金額についてはその返済を免除してもらう方法で、裁判によって行われます。
ただし、自己破産を行ったとしても99万円以下の現金や20万円以下の預貯金のほか生活必需品は残せる可能性があります。
自己破産のメリットは、借金の返済が免除になることです。しかし、ほかの債務整理と同様に信用情報機関にその情報が登録されるため、5年~10年の期間はローンを組むことやクレジットカードを新しくつくることは難しくなります。
6. 返済で大変な思いをしないための方法を確認
教育ローンや奨学金の返済で大変な思いをしないためには、まず利用する教育ローンについては金利の低いものを選ぶことが大切です。
合わせて申込前に家計の状況を見直し、改善すべき点は改善することや、借り入れる金額は最小限にとどめることも考えましょう。
また、無理のない返済計画を立て、それにそった返済を続けていくことも忘れないようにしてください。
7. 教育ローンの返済が大変にならないよう、自分に合うローンを見つけよう

教育ローンを借りたものの返済が大変になることは避けたいものです。そのためにも教育ローンは複数の商品を比較し、できるだけ金利の低いものを探すようにしましょう。その際には一括比較サイトを利用すると簡単に探せるのでおすすめです。そのうえで自分に合った教育ローンを見つけ、申込むようにしてください。
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ライター紹介
- 氏名:
- 新井智美
- 保有資格:
- ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
- 主なキャリア:
- コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,500本以上。
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